3行まとめ
- 無償で送った商品も対価です — 米国・日本・韓国はいずれも、提供を受けた事実の開示を求めています
- 日本では2023年10月から、広告であることを隠した投稿を広告主の責任として規制しています(2023)
- 製品登録とキャプションの文言は国ごとに異なります — 米国のMoCRA登録(2024)、インドネシアの化粧品ハラール義務化(2026.10)
シーディングも広告です
シーディングとは、インフルエンサーに商品を無償で送り、自然なレビューを待つ手法です。お金を払っていないから広告ではないと考えがちですが、多くの国では無償の商品も「経済的な対価」とみなされます。
米国では、連邦取引委員会(FTC)が基準を定めています。FTCのインフルエンサー向けガイドは、無償または割引で商品を受け取った場合、ブランドが言及を依頼していなくてもその関係を開示するよう求めています。「ad」「sponsored」のような明確な言葉を投稿内に記載する必要があり、ハッシュタグの間に埋もれさせたり「もっと見る」の後ろに置いたりするのでは不十分です。動画の場合は、概要欄ではなく動画内で、音声と字幕で開示するのが望ましいとしています。FTCは2023年6月に「推奨・保証ガイド(Endorsement Guides)」も改訂しました。
日本では、2023年10月1日から「ステルスマーケティング(ステマ)」を景品表示法違反として規制しています(ステマ規制)。広告であるにもかかわらず広告であることを隠した投稿が対象で、責任はインフルエンサーではなく広告主にあります。投稿に「広告」「PR」「プロモーション」といった表記や、「A社から商品の提供を受けました」という文を入れるよう求めています。海外ブランドが日本のクリエイターに送った商品も、例外とみなすのは難しいでしょう。
韓国の基準も同じ方向です。公正取引委員会の「推薦・保証審査指針」は2024年12月の改正で、ブログ記事の表記をタイトルや冒頭に置くよう定め、販売リンクの手数料のように後から受け取る対価や条件付きの対価も開示するよう求めています。韓国国内の基準を守ってきたキャンペーンであれば、海外でも出発点は同じです。
その商品は、その国に輸入できるか
どれほど良いレビューが集まっても、その国で販売できない状態の商品であれば、シーディングは逆効果になります。化粧品を例にとると、国ごとにハードルが異なります。
米国では、2022年12月に化粧品規制近代化法(MoCRA)が成立しました。米国で販売する化粧品を製造する施設は、海外の工場であってもFDAに登録し、製品は別途リストを提出する必要があります。FDAはこの義務を2024年7月1日から施行しました。通関も変わりました。米国は2025年8月29日から、すべての国を対象に少額貨物の免税措置(デミニミス)の適用を停止しました。シーディングボックスが小さくても、関税と通関書類を事前に計算しておくのが安全です。
日本では、医薬品医療機器等法(薬機法)に基づき、化粧品を輸入・販売するには「化粧品製造販売業許可」を持つ会社が品目ごとに製造販売届を提出し、容器に全成分を表示する必要があります(JETRO、2025年8月更新資料)。まずは現地の輸入業者や販売パートナーを誰にするかを決める必要があります。
インドネシアでは、輸入化粧品も食品医薬品監督庁(BPOM)への製品届出(notifikasi)を済ませなければ流通できません。さらにハラール認証が加わります。政令2024年第42号に基づき、2026年10月から輸入品を含む化粧品にハラール認証が義務化されます。今インドネシアでのシーディングを準備しているなら、まずハラールのスケジュールを確認する必要があります。
キャプション1行が問題になる
3つ目は文言です。ブランドが渡した紹介文がそのままインフルエンサーのキャプションに入ると、その文は広告として扱われます。
日本では、化粧品が標榜できる効能を56項目に定めています(厚生労働省通知、2011年)。「乾燥による小ジワを目立たなくする」や「日やけによるシミ・そばかすを防ぐ」は範囲内ですが、「シミが消える」のように治すことを示す表現は範囲を超えます。厚生労働省の「医薬品等適正広告基準」(2017年改正)も、化粧品の広告がこの範囲を超えないよう定めています。
韓国語で使っていた文言も同じ目で見直す必要があります。「治療」「改善」「再生」や、美白を断定する言葉など、医薬品の効能と受け取られうる表現は国ごとに許容範囲が異なるため、翻訳する前に現地の基準で改めてチェックしなければなりません。米国FTCのガイドも、根拠のない効能の主張をインフルエンサーが行ってはならないと記しています。
最も安全な方法は、ブランドが「使ってよい言葉」と「使ってはいけない言葉」を国ごとに簡潔にまとめ、商品と一緒に送ることです。クリエイターの語り口は活かしつつ、効能表現だけは基準内に収めることができます。
| 国 | 広告表記 | ラベル・登録 | 文言の注意点 |
|---|---|---|---|
| 米国 | 無償提供も開示 · 「ad」「sponsored」を投稿・動画内に(FTC) | MoCRA施設登録・製品リスト(2024.7施行) · 少額免税の停止(2025.8) | 根拠のない効能の主張は禁止 |
| 日本 | 「広告」「PR」の表記 · ステマ規制、広告主の責任(2023.10施行) | 化粧品製造販売業許可を持つ会社による品目届出 · 全成分表示 | 効能は56項目の範囲内のみ · 「シミが消える」は不可 |
| インドネシア | インフルエンサー表記の専用規定は現地での確認が必要 | BPOM製品届出 · 化粧品のハラール認証義務(2026.10) | 医薬品的な効能表現は現地の基準で確認 |
| 韓国(参考) | 「広告」「協賛」をタイトル・冒頭に · 条件付きの対価も表記(2024.12改正) | — | 「治療」「改善」など医薬品的な効能表現に注意 |
送る前にもう一度
3つのポイントには順序があります。まず商品がその国に輸入できるか(登録・通関)、次に投稿に何を表記するか(広告表記)、最後に何を言わないか(文言)です。この表の内容は2026年10月時点の公開資料をまとめたもので、実際に実施する前には現地の専門家による確認を経ることをおすすめします。
HOMI FACTORYは、日本・インドネシア支社と各国のネットワークを通じて、国ごとの表記・文言の基準をまずキャンペーンガイドに盛り込み、そのうえでクリエイターに商品をお送りします。
実務チェックリスト
- 送り先の国で、この商品の登録・届出は完了していますか?(米国MoCRA、日本の製造販売届、インドネシアBPOM)
- インドネシアの場合、2026年10月のハラール義務化に合わせて認証状況を確認しましたか?
- 通関書類と関税負担(米国の少額免税停止を含む)を事前に計算しましたか?
- 国ごとの広告表記の文言と位置を、クリエイターガイドに記載しましたか?
- 効能表現の「使ってよい言葉/使ってはいけない言葉」のリストを、現地語で一緒に送りましたか?
出典
- 米国連邦取引委員会(FTC)、「Disclosures 101 for Social Media Influencers」(2019年11月) · 「Endorsement Guides」改訂(2023年6月)
- Impress Watch、「ステマ規制、10月1日施行」 — 消費者庁の指定告示に関する報道(2023年3月)
- 法務法人 世宗、「『推薦・保証等に関する表示・広告審査指針』改正案の行政予告」(2024年11月) · 亜洲経済、公正取引委員会による推薦・保証解説書の配布に関する報道(2025年12月)
- JETRO、「化粧品の輸入手続き」(2025年8月更新) · 静岡県、「化粧品の効能の範囲」 · 厚生労働省、「医薬品等適正広告基準の改正について」(2017年9月)
- ChemLinked、MoCRA施設登録・製品リスト施行に関する案内(2024年) · KPMG、「CBP implements EO suspending duty-free de minimis treatment」(2025年8月)
- Fortune IDN、「Mulai 2026, kosmetik impor wajib bersertifikat halal di RI」(2025年7月)
数値は発行時点の公開資料に基づいています。



